年末も迫り慌ただしい毎日ですが、頑張って時間を作り体調を万全にして、フレデリック・ワイズマンの新作「ボストン市庁舎」を見てきました。
前作「ニューヨーク公共図書館」も3時間超えの作品で、公共図書館の幅広い業務や舞台裏を様々な角度から見せてくれる良作品でしたが、今回はなんと上映時間4時間35分! 流石に見終わったときは腰が痛かったけど、それ以上に素晴らしい作品を見たという満足感でいっぱいで、本当に見に行ってよかった。
映画は最初に犯罪被害者のサポートやケアについての会議をやっているところからスタート。(当時の)市長のマーティン・ウォルシュ氏が「各部署の連携がもっと必要だ」という発言をしていたように記憶しています。
ウォルシュ市長はその後も老人クラブの会合、看護師の待遇改善デモ、退役軍人会…と色々なところに出向いて市民と対話し続けます。
この映画はこういった対話のシーンが大半を占めるのだけど、終盤に出てくる大麻のお店を開きたい事業者と地域住民も会合でのものすごい意見のやりとりが必見です。(もし疲れて途中で寝ちゃっても、ここだけはちゃんと起きて見たほうがいい)。
集まった住民と出店を計画している事業者代表の間には火花が散って見えるぐらいなんだけど、特に市民の側の、皆で徹底的に意見を出し合ってより良い結末にするためには言いたいことははっきり言う、という態度は圧倒的でさえあります。
映画の中では説明会のシーンだけだったので、実際に出店できたのかどうかが気になります。
それ以外にも市庁舎の仕事の数々、ゴミ収集や駐車違反の切符切り、道路の補修作業や渋滞解消作業からレッドソックの優勝パレードまで、ものすごく多岐に渡る業務の様子が合間に挿入され、実際に近くに行ってボストンという街を眺めているような気分になりました。
4時間以上数々の対話シーンを捉え続けた映画の最後はウォルシュ市長のスピーチで締めくくられますが、その中で市長が話した「自分たちの仕事は市民のために扉を開くことだ」という言葉が特に心に残りました。市民に寄り添い少しでも皆の生活を良くしようと行動している人の言葉だなと。
なんて有能な人なんだ、その後どうしてるんだろう…と調べたら、バイデン政権の労働長官に就任していました。政治家としてはステップアップなんですかね。
日本では、この映画に出てきたボストン市民のように意見を述べるとうわあ…って思われてしまいそうだけど、状況を変えようと思ったらお互いに意見を出して対話し続けるしかない。それこが民主主義の礎となるんだろうなと感じました。